スナノキヲク 8



No probleme!


 くらげが見て回ったのはそのほとんどが日本のガイドブックにも載っている、いわば日本人にも知られている町でした。しかし、1カ所だけあまり日本人には知られていないところがありました。もっともドイツのガイドブックには紹介されているので、全くの僻地ではありません。問題は交通手段です。バスもルアージュも通っていないのです。こういう場合はやはり「便乗」です。生活物資を運ぶトラックがあるので、それにもぐりこむわけです。もちろんそれなりのお礼は必要です。なにしろくらげはこの国では「富める者」なのです。車はホテルのオヤジが探してくれましたが、朝の十時ごろ出発のはずが全然来ません。十二時を過ぎても車はやってきません。くらげにも都合があるので、キャンセルを考え始めたころやってきました。しかもその後も町中を行き来し、結局出発は一時半になってしまいました。





車が止まる


 その車は荷物を満載した1トンくらいのトラックで、もちろんオンボロです。座席は三人掛けでちょっと窮屈です。しかも、驚いたことに荷台にはさらに5人もの人が乗っていたのです。目的地まで約150km、しかも未舗装。沙漠の中の道はほとんど草木をどけて平らにしただけのものです。途中に町はなく、所々に標識とカフェが2,3カ所そして泉を示す看板があるだけです。でも、バイクで走ったらさぞかし楽しいのではないかと考えていました。すると突然車が止まりました。故障ではありません。お祈りの時間です。チュニジア南部の人の多くは熱心なムスリムなので、お祈りをおろそかにはできません。お祈りが終わると簡単な食事になりました。くらげも加わらせてもらいました。これは車の持ち主のおごりでした。これもやはり「富める者は…」の教えなのです。





荷物の上の人々

 途中で日没になり、もう一度お祈りがありました。すると一人が荷台の上に乗ってみないかとすすめます。これから暗くなるので迷いましたが、狭いところに疲れていたので荷台に上がることにしました。席を替わった人から毛布を借りて、体に巻き付けて出発です。やはり、風は相当冷たく毛布がないとかなりつらいです。でも、沙漠に沈む夕陽を見ながら風に当たって走るのは、ちょっとだけバイクに乗っているのに似ています。辺りも暗くなったとき、遠くに灯りが見えました。目的地の「クサール・ギランヌ(Ksar.Ghilane)」です。町の看板も見えました。そして車は林の中に入って行きました。林に見えたのはオアシスの椰子畑でした。その奥でくらげは車を降りました。車のオーナーやドライバー達と握手をして別れましたが、少しだけ彼らの仲間にしてもらえた気がしました。





ノマドの夜


 ここクサール・ギランヌはやはり沙漠の縁に当たるオアシスの町です。ただ、ドゥーズの砂の色がクリーム色だったのに対してやや赤みを帯びています。泊まるところは少し変わっていて『ノマド』と呼ばれる遊牧民のテントに泊まります。電気は自家発電で食堂などの周りにのみ照らされていて、各自のテントへはろうそくを持って行きます。水道はほんのりと暖かい水が出てきますが、これは泉の水自体が暖かく、約30度位の水が湧いているのです。泉の周りは池になっていて、そこで水浴びも出来ます。ヨーロッパから来た人は不思議がっていましたが、日本には同じようななのがたくさんあって、水温も70度以上だというと驚いていました。でもここには火山も普通の山もありません。なぜ温かいのかはわかりませんでしたが、イタリアには温泉があるのでその続きかもしれません。
(注:最近知ったのですが、オアシスの水は沙漠の地下にある水が、砂の重みで湧き上がってくるとか…。地面が熱せられているので、湧き上がるときに温かくなるのかもしれませんね。)

クサール・ギランヌの泉





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